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大宮エリーさんと

お仕事の話 Vol.1

かつては大手広告会社に勤め、独立後は作家、演出・脚本家、画家など、ボーダーレスなクリエイターとして活躍する大宮エリーさん。さまざまな仕事を通してエリーさんが感じたこと、大切にしてきたこと。働くことの厳しさと喜び。そして職場で頑張るすべての人へ伝えたい思いを語っていただきました。第1回は学生時代のアルバイト体験についてのお話です。

撮影/佐山順丸 取材・文/細谷あつ子

アルバイトで地頭を鍛え、感性を磨き、
ネタを作っておこう!

絵本を読んで、ドラえもんの分銅を作って。不思議な家庭教師エリー

 難病を患ったお父さんを助けたいという思いから、一浪して超難関の東京大学薬学部に入学した大宮エリーさん。ところが、ご本人いわく、「無理して入ったもんだから全然、勉強についていけない!」現実が……。ドラマのようなキャンパスライフも夢みていたのに、友達すらあまりできず、〈グレー〉な学生時代だったといいます。そんななか、エリーさんが経験したアルバイトは、まず家庭教師でした。

「本当は飲食店かパン屋さんでバイトしたかったんですよね。余りものを食べられるかな、と思って。でも、お金も時間もなかったから、時給のいい家庭教師を選んだんです」

 そこで出会ったのは、さまざまな子どもたち。算数ができないというある男の子は、じつは算数でなく読解力に問題があり、文章問題が理解できていないことが判明。そこでエリーさんは自分が好きな絵本『大どろぼうホッツェンプロッツ』を読んであげることに。


 「すごくおもしろいところまで読んで、はい終わり。男の子が『続き読んで~!』と騒ぐと、『じゃ、次は自分で読もう』。その子のきょうだいも交ざって、みんなで輪読するうちに、少しずつ読解力が上がっていったんです」

東京大学薬学部に通っていたころの大宮エリーさん。


スキューバダイビングのアルバイトで
衝撃的な未知の世界に遭遇!

 また、別の家では勉強嫌いな女の子に出会ったことも。ベッドをトランポリン代わりにして遊んで騒ぎ、机にも着かないのだとか。

「『前の家庭教師の先生はどうしてたの?』ときいたら、『終わり時間まで漫画読んでた』って。私は『それでお金もらうのってどうよ?』と思ったから、工夫しましたね。分銅の勉強をするときには、1gにはドラえもん、5gにはのび太の顔を書いて興味を持たせたり……。思えば不思議な家庭教師でしたね(笑)」


 そんなエリーさんの次なるバイトはスキューバダイビングのインストラクター。遊びで始めたスキューバで、インストラクターの資格まで取ったのがきっかけでした。入ってみると、まじめな東大生にとっては衝撃の世界!

バイト仲間は社会人が多く、元レディースのヘッドがいるかと思えば、男性インストラクターは海でナンパにも余念がなく……。

もうきっと一生やらない仕事。
学生時代はそんなバイトをするといい

「もう大人の不良集団ですよ(笑)。それでも緊張感のあるバイトでした。お客さんを楽しませ、海のおもしろさを伝えながらも、命を預かる仕事なんですから。いわば〈人の命を背負った体育会系〉、でしたね(笑)」

 そんな仕事を通してエリーさんは自分の固定観念がくずれていくのを感じたといいます。「家庭教師もそうでしたが、この世にはいろんな現実があるし、いろんな人がいる。そんなふうに視野が広がりました。だから学生時代はインターンシップなどより、『役に立たない』バイトをしたほうがいいんじゃないかな。その後きっと一生やらないようなね。そこで新しい世界を見て、地頭を鍛え、感性を磨き、ネタを作っておくといいと思います」

Profile

大宮エリー

1975年生まれ、大阪府出身。広告会社勤務を経て2006年に独立。映画「海でのはなし。」で映画監督デビュー。以後、作家、脚本家、演出家、CMディレクター/プランナー、画家などとしてマルチに活躍中。2012年に初の個展「思いを伝えるということ」展を開催。以降、「生きているということ」展、「見えないものが教えてくれたこと」展などを各地で開催。テレビ、ラジオでも活躍するほか、『生きるコント』『物語の生まれる場所』『猫のマルモ』『なんとか生きてますッ』など著書多数。
http://ellie-office.com/

Information

© Ellie Omiya, Courtesy of Tomio Koyama Gallery
北陸で初となる大宮エリーさんの個展が、福井県の「金津創作の森 アートコア ミュージアム‐1」で開催されます。新作と代表的な絵画作品のほかに、「金津創作の森」の野外空間を大胆に使った大画面のライブペインティングを展示します。

http://sosaku.jp/event/2017/omiya/

4月22日(土)~6月11日(日)
「大宮エリー展 This is forest speaking ~もしもし、こちら森です」

4月23日(日)
「大宮エリーライブペインティング feat.TOKYO No.1 SOUL SET 川辺ヒロシ」
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